選ぶ前に注意したい石 【1】 ターコイズ

今でこそ、ある程度自信を持って「これは●●」「これは××」と
見分けがつくようになりましたが、いわゆる天然石ビーズを巡って
は選び方の失敗もたくさんしてきました。
例えば、「これはラピスです」と紹介されたものが実はソーダラ
イトだったり、「ターコイズです」と言われたものが着色のハウ
ライトだったり。で、そのハウライトも実は本来のハウライトで
はなく全然違う鉱物だったりして、もう、何がなんだか支離滅裂
です。

そんな中、何人かのお客様から「正しい石の見分け方を教えて
欲しい」というリクエストを頂きましたので、店長日記の中で
少しずつご紹介していこうと思います。

第一回目は、【ターコイズ】です。

そもそもターコイズとは、トルコ石は人類が初期に掘り出した
宝石のひとつであり、今もなお多くの人に愛されている石とさ
れています。
名前に「トルコ」とありますが実際にはトルコから産出される
ことはなく、主な産地は、エジプト、中南米、中国、アメリカ
(南西部、特にアリゾナ)が有名です。その他の産地としては、
アフガニスタン、オーストラリア(ビクトリアとクイーンズ
ランド)、チリ北部、コンウォール、サクソニー、シレジア、
チベット、トルキスタンなどもあります。

ターコイズは、より美しく見せるために昔からある程度の
加工は施されていました。2000年も昔から、少量の油や
ワックスによる艶出しは行われていたとのことです。
今でも、本当に質の良いターコイズには、艶出し加工を施す
のみで良いのですが、無処理もしくはほぼ無処理に近い状態
でも長く美しい色や形状を保っていられるターコイズは、
非常に少なくなりました。近年は質的に脆いもの(いわゆる
チョーク質ターコイズと呼ばれるもの)が多いため、石を
長持ちさせてカット等に耐えられるようにするように樹脂を
注入する処理が施されているものが多くなっています。
特にアメリカ産のものは質が脆いものが多いので、樹脂注入
によるスタビライズという強化方法は欠かせません。
そうまでしたものに天然石としての価値があるのかどうかと
尋ねられれば、あくまでも個人の主観によるところがあると
しか答えられませんが、宝石としてはここまでの範囲なら一応
「本物のターコイズ」とみなされます。

よくある偽物のターコイズは、基本的には着色が中心です。
一番多く用いられるのが、ハウライトやマグネサイト。
どちらも、もともとは白がベースの石です。地模様に、ター
コイズのようなグレーの網状のものがあり、着色してもその
模様が消えないため、ターコイズの代用品として多く流通
するようになってきました。ただし、最初から「ハウライト
ターコイズ」などと書いてあれば良い方で、ハウライトなの
に「本物のターコイズ」と偽って販売している業者も少なく
ありません。
ターコイズにしては妙に色が濃いとか、グレーのマトリクス
が単調なものだと思われたら、それは大体ハウライトかマグ
ネサイトを着色したものだと思われます。ただし、マグネサ
イトは線の入っていないものもありますので、わざとらしい
青一色でのっぺりした感じのものも疑ってかかっても良いで
しょう。
その他、ターコイズの粉末を集めて再度固めた「再構築」
によるものもありますが、これを人工処理とみなすか人工石
と見なすかは難しいところです。個人的には「人工石」だと
思いますが、素材はターコイズですので、先にあげたような
全くの別物とも異なります。
ただ、こうした「再構築」された素材の原料の殆どは、天然の
物質をまったく含まない完全な偽造、または、異質な充填剤が
加えられていることもありますので、やはり人工石ではないか
…と思います。

ちなみに、理想的なターコイズブルーは、アメリカコマドリ
の卵の色と言われています。明るく、ほんのり緑を含んだ
ような水色で、ティファニーの箱の色と同じです。
ティファニーもまた、アメリカコマドリの卵の色をお手本
にブランドカラーを決めたと言われていますが、それはこの
色が当時の上流階級に最も好まれた色だという説もあります。
なので、質の良いターコイズを選ぶ基準のひとつとして、
ティファニーの箱の色を目安にされると良いと思います。

ターコイズはとても脆く、薬品にも弱い石です。
アルコールや油分・皮脂によって退色・変色することがあります。
香水やメイク、日焼け止め、ヘアスプレーなどが直接かからない
ように注意してください。直射日光にも注意が必要です。
しまうときには柔らかい布で優しく拭いて、他のアクセサリと
ぶつからないように別けて保管することをお勧めします。